地獄で悪魔に惚れられて、穴熊
・悪魔を崇める歌
タバコの臭いと、埃が鼻に付き、まるで、所謂、釜の底に入る気分だ。
多くを失い過ぎた、多くの失敗をした。
美女神にも愛想つかされ、冬の寒さに凍える胸の内。美しき想い出に蝕まれた心。
俺に罰を受けさせるために、黒いマスクの処刑人が近づく、一刻、刻一刻、彼の高いブーツの"カッーン"という足音が聞こえる。
我ここに来て今、終わりを待つ身。
"姿見せぬ神よ私をお救い下さい。神怨み人を貶める悪魔よ私は君等の同志だ、私は率先して君等を崇めましょうぞ"
・黒いトレンチコートの悪魔
Barは涼しい、冬場も心地よく涼しい。きっと、アルコールで上がる体温と室内の温度設定がうまくいっているのだろう。
そして暗いのが良い、まるで客は穴熊だ。人間だからといって光ばかり求め続けるのも、何か鬱陶しく感じる奴等の穴屋、そう、我等は愚かな穴熊たち。
・ソルティードッグの悪魔
俺は今日もソルティードッグを飲む。
あ、カクテルなんて女の子の飲み物だ?
君は世界を知らなすぎる、君はまるで日本人だ、愚かな斜陽国の国民め。
しかし、まー国民よ聞いてくれたまえ、実は先ほど変な客がいた。君は見なかったかい?
黒いトレンチコートを着て、黒いポークパイハットを被った奴だよ。彼奴は俺の隣に座ってきた、クロックスにトレンチコートもハットも預けずそのままの格好で(完結した格好、足りないものがない)。
彼奴が何をマスターに注文したと思う?
いや、びっくりすることにソルティードッグを注文しやがった。よりによって俺と同じものを。
彼奴の口はウニョウニョと収支動いていて、何か声を発していた、経のような呪文のような、
俺は其を聞き取ろうと、彼奴の口許を見詰めていた。
そしたら、向こうが俺に振り向いた、心臓が止まったよ。ウニョウニョと動く口の上には鼻がなく、鼻の上には眼球のない、空洞だけの黒い目が俺の目を見詰めていた。
俺は驚いて椅子から倒れた、俺が頭を打って、もがいている間に、彼奴は消えていなくなった。
国民よ恐怖はいつだって直ぐそばにいる、悪魔は人間の心臓の熱狂的ファンだ。
まー気を付けな。
・bye bye Salty Dog
ソルティードッグ好きの客が帰るとき、クロックスの横についた鏡には何も写らなかった。
彼もソルティードッグも。
では、どういうことなのか?
答えは明白だ。
暗闇を好む人間は暗闇の深穴に沈んでしまう、直ぐにね。
悪魔は惚れたら早いんだよ。
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