永遠の嘘をついてくれ


  先日、君と会ったときに、君は大江健三郎を読んでいて、僕としては文学部でもない君が、そんなものを読むのが可笑しくてならなかった。
「流行っていて、現在と同期している物には飽き飽きしたんだ」
君はそう言っていたけれど、互いに流行の波に乗れるほど、生き生きとはしていない、どう転んだって"はぐれもの"だ、昔はそんな自分達に誇りを持っていたけれど、幻想の日々は終わり、固く閉じられていたはずの鉄の扉は錆びて、隙間からは、雲ひとつない青い空が見える、
地震の前触れのように晴れた空、しかし、かろうじて扉は扉の役割をしている。それが神経をここまで疲れさせるのだ。
 "昔はよかった"何て言わないよ、あのときはあのときで苦労もあったんだ。
覚えてる?
TOWER OF POWER
のアルバム?
 西海岸に僕が行くときに、君が教えてくれた"音楽"
ベースが16ビートを弾き続ける
、ソウルグループなのに白人のメンバーが多かった。
君にしてみれば、西海岸はこんな感じだよといったところだったのだろう。
それは、嘘ではなかったよ。
僕はTOWER OF POWERを聴きながらサンフランシスコを楽しんだ。
 嘘だと思う?
 お前は楽しめない男はだって?
 いいや、もう嘘はつかないよ。強がる日々は終わったのさ。
 しかし、永遠に強がらないことなんて、可能なのだろうか?
明日、死なない限り何処かで強がるのではないだろうか?
君は愛する女の前で、平然といられるかい?
そう、まだ肌もふれ合ったことのない間柄で。
 

Frank Dazai作品集

生前、彼の書いた主にショートショート、短編、また彼のライフスタイル等を掲載しております。 お時間があるとき、コーヒー片手にタバコを口許にお読み下さい。 お時間はとらせません。

0コメント

  • 1000 / 1000