DEATH LETTER BLUES
Ⅰ ブルーシート村
中流家庭出身者は、少なくとも日本においてだが、一般的な人間なのかもしれない。
お国は日本には階級がないと言う。確かにね、貴族はいないし、財閥という名は存在しない。ロスチャイルドもロックフェラーも日本にはない。
まぁ、実際は枝を辿れば欧米の財界か政治に繋がっているけれど。
それで ”スラム街は日本にはありません”
こんなことを言っていた、有識者もいたけれど、それは嘘だ。
私の生まれた地元の高速道路下のブルーシートで出来た、小屋の並びは何であったのだろう?
”空葬”をしているわけではないだろうに。
Ⅱ 落陽
昔の話だ、もう十五年以上も前。
スカイツリーがない押上は、老人の町で寂れていたし。
錦糸町の駅には年老いた浮浪者が物乞いもせず、道行く人に暴言を吐いていた頃、煙草の吸い殻がアスファルトの歩道にモザイクを描いていた頃。
わかるだろ?どれだけ昔の話か。
Ⅲ Time flies
少女が僕に尋ねた
「モスクワが何処に在るかわかる?」
僕は大体の場所は知っていた 。
そういった事に妙に詳しい少年だったのだ。
「知っているよ、ロシアの首都でしょ」
「私そこで生まれたの」
そんな、大したことの無い会話を今でも思い出す。
僕は彼女とは仲が良かった。
でも、大人達はそれを歓迎はしなかった。
彼女が悪いのではなく、彼女の両親に問題があるとか、そんな理由だった。
もちろん、当時だって”馬鹿馬鹿しい”と思っていた、子供ながらに。
結局、彼女は若くして死んだ。
小さくひっそりと、葬式が営まれた。彼女の同級生徒と少ない親戚が焼香に訪れていた。
僕は涙も出なかった、悲しいとも思えなかった。
しかし、式場の大人達には嫌悪感を感じていた。
そして僕は棺桶のある最上の入り口にあった、パイプ椅子を棺桶の方に投げた。
きっとそのとき僕はこう言ったはずだ。
「馬鹿が勝手に死にやがって!!」
そして大人達を睨んで
「お前たちが死ねばいい」
無論、僕は精神科に連れていかれた。
そして特に”素晴らしくも無い”月日が過ぎ去り、今では嫌っていたはずの大人になってしまった。
きっと、今ならパイプ椅子を投げたりしないだろう。
”オーベイビー、僕はつまらない人間なんだ”
しかし、何も後悔していない、少しも悪いことをしたとは思わない。
むしろ、誇らしいよ...
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