失われた世界の門出にコーヒーを飲みに来た誰かに、世界の閉店を告げる誰かへ
願わくば白く続く積雪した広野をたった一人、馬に乗りながら、果てしない旅路の中で終わってしまった世界をさ迷いたく思う。
愛もなく嫉妬もなく羞恥心も感じない。
誰もいないのだから、誰かにとやかく言われることもない。
"永遠の孤独""美しき懺悔の旅"
空には月も浮かばず、太陽は暑さばかりを与え、肝心な姿を現さない。
灰色と暗闇の繰り返し、暗闇に輝く二つの光は虎かハイエナか、はたまた、幻想か。肥満体だった体は痩せ細り、野生の臭いを常に発する。
ラルフローレンかブルックスブラザーズのトラットなスーツスタイルで変わり果てた荒野の目抜き通りを、堂々と白々しくも、駆け抜ける。
まだ、世界があった頃によく行った喫茶店のカウンターに座り、気取ったカップにウィスキーを入れ、世界があった頃のことを思い出しながら煽る。何もなかった何も手に入れられなかった、誰も愛をくれなかった世界、今世界は失われたが、根本的には変わらない孤独がある、しかし、いささか前より機嫌が良い。
ふと、入り口のベルが鳴る、誰か何かが
コーヒーを飲みにやって来たようだ。
だから、教えてあげなくちゃならない、
コーヒーは失われた世界のものだと。
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