花のサンフランシスコ

 彼女と会ったとき、ふとサンフランシスコでのことを思い出した。
 空港から何もない港を通りすぎると、
突然、摩天楼の見えてくるあの町。
 直角に近い坂をケーブルカーが往来する、あの町。
  僕はそこで旨くもないハンバーガーショップに入り、旨くもないハンバーガーを食べた。アメリカ人と日本人の舌は、違う器官なのだろうと思ったよ。
そりゃ、戦争もするわけだ。
  まーしかし、悪いとは思わなかったよ。
別の町で、別の国で、別の世界で、外人になること事態は。
   そう、面白い話がある。その店でコーラを注文したら、ウェイトレスがこう言ったんだ。
 「中国にもペプシコーラはあるの?」 てさ、僕は答えたよ「たぶんね、きっとハンバーガーもある」。
そうしたら彼女はこう言ったんだ。
「ハンバーガーはあるでしょうね、だってハンバーガーは海賊だから」
 彼女は僕が結局何人かは聞かなかったよ。
つまりさ、全部ジョークなんだよ。
全く恐れ入ったよ、アメリカ女には。
異文化もいいところだ。
  でも、考えてみたら、もし、彼女と抱き合ったら、僕は背の高い彼女の"どてら"
をずっと見てることになるんだから、結局はさ互いに宇宙人なんだよな。
壁というかでかい、宇宙船というかに、遮られた関係だよ。勿論、越えられる関係を結べる奴等も居るんだろうけどさ、
しかし、田吾作の僕には難しいね。
  で、最初に話した女だけど、不思議とね、彼女を見ても、壁も宇宙船も見えなかったんだよ。彼女はアジア人だったけど、やっぱ俺とは違う宇宙人だろ?
 でも、そのとき俺には壁も宇宙船も見えなかった、あったとしても、越えられそうな気がしたんだよ、壁だったらね、
宇宙船だったら、あのくだらないアメリカ映画みたいにさ、でっかい銃で吹き飛ばせる気がした。
  でもあいにく、それは幻想だったよ。
壁も越えられなかったし、宇宙船をぶっ壊すこともできなかった。
 あまりにも巨大で大きいんだよ、僕にはね。もう、諦めたよ....
  でも 、一つわがままが言えるならさ、
僕はでっかい宇宙船に乗って、何らかの武器で地球を粉々にしたいね。
世紀の悪役だろ?スーパーマンもバットマンも大慌てだ。
   そしたら、あのウェイトレスはこういうはずさ。
  「きゃー空からでっかいハンバーガーが降ってきたわ!」ってさ。
 なぁアメリカンだと思わないか?


Frank Dazai作品集

生前、彼の書いた主にショートショート、短編、また彼のライフスタイル等を掲載しております。 お時間があるとき、コーヒー片手にタバコを口許にお読み下さい。 お時間はとらせません。

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